トラック1は、『焔』の淡々としたスタジオ録音より二分以上も長く情熱的なナンバーです。個人的には評判ほどスタジオ録音を圧倒しているとは思いませんが、しかし、「バッド」がU2の名曲としてあげられるさいには必ず「ライヴ・ヴァージョン」という指定がつきます。U2がライヴ演奏をもって示すロックンロールの可能性にリスナーは多かれ少なかれ説得されるでしょう。延々と長く続くけれどそのうちぐんぐんと胸に迫ってくる熱い演奏に合わせて、ボノのヴォーカルが、麻薬中毒者のすさんだ情況について“This desperation dislocation Separation condemnation revelation In temptation isolation desolation”とほとんどが“バッド”な意味合いの“ation”を並べ尽くして表現します。そのあと、曲は、“バッド”な状態を振り切って麻薬中毒者を救おうとし、「ぼく」は覚醒した状態で眠らずにいると訴えるのです。
紙幅の関係上、2については割愛。3は、ポジティヴな曲調で重厚なハーモニーやギター、そして太陽の光りとその下で生きる自分を全面肯定し祝福する詞がこの時期のU2には不似合いです。3とともに『焔』から外された4は、別れる相手に「すべての道は君のいる場所に通じている」と言ってやるところが甘く切ないヨーロッパ的なポップナンバーです。最後のエッジのリズム・ギター演奏は『焔』の次作『ヨシュア・トゥリー』の「ホエア・ザ・ストリツ・ハヴ・ノー・ネーム」へと断絶しながらもつながっていくような気がするほどすばらしいです。
日本盤ライナー・ノーツを参照すると、「バッド」の歌詞からとられた「ワイド・アウェイク」の意味は、1.すっかり目の覚めた、2.用心深い、3.広い縁の中折れ帽、だそうです。『ヨシュア・トゥリー』のジャケットでボノとエッジが「ワイド・アウェイク」をかぶったことを思うと、U2が非常に意識的かつ用心深く人生を歩んだことに驚きます。
ただし、現在の基準では、値段のわりに曲数が少なすぎるので、星四つです。